『Verdy’s Postal Service』Opening Party Photo Report&Interview
グラフィックアーティスト・VERDYとPARCOによる共同プロジェクト『Verdy’s Postal Service』が大阪・心斎橋PARCO B1Fにオープン。誰もが気軽にメッセージを送り合えるデジタル時代にあえて「手紙」という手書きのコミュニケーションを提案する当ショップは、オープニング前日から多くの人々の熱気に包まれた。本記事では、そのレセプションパーティからVERDYが手がける大阪・谷町のピザショップ「Henry's PIZZA」でのアフターパーティの模様とともに、共同プロジェクトの背景や生まれ育った大阪での記憶を語ったVERDYのインタビューをお届けする。
- Photo
- Sachiko Saito
- Photo
- Koki Morishima
- Text
- Hanako Imai
- Edit
- Mariko Araki
新しいプロジェクトのはじまり。
あたためてきた“手紙文化”への想い
心斎橋PARCOのB1Fに足を踏み入れると、深いグリーンを基調とした空間が広がる。グラフィックアーティスト・VERDYが新たに始動させた共同プロジェクト「Verdy’s Postal Service」の実店舗だ。このプロジェクトのはじまりは、心斎橋PARCO開業時に「ウォールを使って、一緒に何かできないか」というPARCOからの連絡に遡る。その壁一面を飾る描き下ろしのグラフィックはB1Fのエリアに今も健在だ。
「PARCOチームのみなさんとは定期的に会っていて、『何か面白いことをしよう』とお話ししていたんです。立体的な時計を作る案などもあったのですが、『郵便ポストはどうですか?』と提案してみたんです。そういった種類のモノをデザインするのはまだ実現させたことがなかったのですが、PARCOチームが動いてくださり、ポストを設置できる見通しが立ちました。そこから手紙の文化をコンセプトにしたお店をやろう、と一気に構想が膨らんでいきましたね。手紙を書くことも、手で文字を綴ることも昔から好きだったんです。海外、たとえばパリの売店やアメリカのスーパーマーケットに行くと、エッフェル塔のイラストや音の出るカードなど、いろんな種類のポストカードが日常の中に当たり前に並んでいる。日本だと、格好いいポストカードを買える場所が意外と少ないと感じていて。旅先でお土産を買うような感覚で手に取れて、アート作品を手軽に持ち帰ってもらえる場所にしたい。そういう想いで、お店の具体的なコンセプトを考えていきました」
「昔、ヴァージル(アブロー)からもらったギフトに僕の名前が手書きで入っていたことがありました。それらは何年経っても大切にするし、宝物みたいに手元に残っています。今の時代、SNSのDMを使えば世界中の誰にでも一瞬でメッセージを送れますよね。だからこそ、相手のことを想いながら時間をかけて手で書く行為には、デジタルとは違う、特別な価値が宿ると思うんです」
レセプションパーティで垣間見た、
それぞれのストーリー
オープンに先立って開催されたレセプションパーティは、多くの人々で熱気に包まれた。店内には実際に手紙を書いて投函できるスペースが設けられ、来場者たちが思い思いの言葉をポストカードに託していた。
「僕自身もパーティの際、家族に手紙を書いて店内のポストに投函したんです。今は土日祝の配達がないこともあり、届くまで数日かかりますよね。毎日『まだかな』とポストを覗き込む時間すらも、日常生活の中の小さな楽しみみたいな。レセプションで手紙を書く方たちのなかには、遠距離恋愛中の彼氏や、普段なかなか帰省できないからと両親や祖母に手紙を書く子など、一人ひとりにストーリーが存在するんです。それを見て、このプロジェクトは、すでにみんなのものになりつつあるなって」
手紙だからこそ残る想いと、
クリエイションの原動力
「京都大作戦という野外フェスのブースに毎年遊びに来てくれていた、当時小学生の男の子がいたんです。彼が大人になって、今回のレセプションに来てくれて、『将来は世界で活躍できる仕事がしたい』と書かれた長い手紙を手渡してくれました。韓国で個展を開いたときも、昔から応援してくれる男の子がBillboard Koreaに就職して取材記者として会いに来てくれたことがありました。SNSやDMでのコメントももちろん嬉しいけど、やっぱり手紙として残ると部屋に帰ってからも読んだりして、自分のやってることが誰かに影響を与えてるってより実感できて、もっと頑張ろうと思えますね」
ショップには、VERDY自身のグラフィックを落とし込んだシグネチャーのポストカードをはじめ、親交の深いアーティストとコラボレーションしたデザイン、カラーペンシルなど、多彩なステーショナリープロダクトがずらりと並ぶ。また、doubletデザイナー井野昌之氏が「Verdy’s Postal Service」のコンセプトから着想したエアメールデザインのTシャツといったアパレルラインナップも展開。
「手紙の書き方ガイドを作ったり、英語表記の案内を用意したりすれば、海外から訪れる方にももっと手紙を書く楽しさを体験していただけるかも。ペンやスケッチブック、筆ペン、オリジナルの切手、ポストカードを部屋に飾れるフレーム…作りたいアイデアが次々と湧き出てきています。子どもの頃、キース・ヘリングのポストカードを買って部屋に飾ってたんですよね。高価なアート作品は買えなくても、アート作品のポストカードなら気軽に手に入れて部屋に飾れます。今回、自分が好きな大阪にゆかりのあるアーティストにポストカードを作ってもらったんですが、カードを通じて誰かに知ってもらうきっかけになるのも素敵だなと」
カルチャーに夢中になった少年が世界へ。
大阪で繋がるルーツと今
インタビューは彼のルーツへと及んだ。大阪で生まれ育ったVERDYは、どのようにして世界を魅了するグラフィックアーティストへと躍進を遂げたのか。
「幼少期はサッカーをやっていたんですが、特別上手いわけでもなく、勉強が得意なわけでもなかったんです。絵を描くことは好きだったけど、本当に何もない少年でしたね。小学校高学年のときに、コンビニの雑誌コーナーに並んでいるストリートファッション誌で裏原宿のカルチャーとパンクの音楽に同時に出会ったんです。初めて心の底から夢中になれた世界だった。中学生になるとアルバムジャケットのイラストを模写したり、アメ村に連れて行ってもらっては、怖そうな店員さんに緊張しながら裏原ブランドのショップに並んだりしていました(笑)今の心斎橋PARCOがある場所は高校時代、東心斎橋でアルバイトをしていた頃から御堂筋線を降りてよく通っていた道沿いなんです。そんな場所に今、自分のショップを構えられることには特別な感慨がありますね」
「20代は本当に仕事がなくて。時々クライアントから依頼されるTシャツデザインなどの依頼を受けていたんですが、自分が好きなデザインはなかなか通らず、相手から『こう描いてほしい』と言われた要望通りに描く日々――そんなとき、初めて行ったLAで出会った現地の友人から『VERDYのデザイン、なんでこれはかっこいいのに、なんでこっちは違うの?』ってはっきり言われて(笑)。彼の一言でハッとして。自分らしくないモノを世に生み出すのはもう絶対にやめよう、と。そもそも十分に稼げていない状況だったんで、たとえお金にならなくても、自分が心からかっこいいと思えるものだけを作ろうと退路を断ちました。そこから自分のブランド「Wasted Youth」を始めたんです。今はデザインのコンペには一切参加しませんし、いくつも代案を提案することもありません。自分が100%自信を持てる『渾身の1つ』だけを提示するスタイルになりました。ストリートの現場から、企業の大きな支援がなくてもグラフィックひとつで世界とわたり合えることを証明したかったんです。僕がこうして活動できているのは、小学校のときに出会って夢中になった裏原カルチャー、NIGO®さんや藤原ヒロシさん、ジョニオさんたち先輩方が築いてきた文化があったからこそなんです。だからこそ今度は僕が次の世代へ伝えて、大切なカルチャーのバトンを繋いでいければなと思ってます」

- ショップ名
- Verdy's Postal Service
- フロア
- B1F
- 電話番号
- 06-6226-8123
- 公式ブランドサイト
- https://vsps.parco.jp/
- 公式SNS
- Instagram(@vsps_parco_official)

VERDY
1987年生まれ、大阪府出身のグラフィックアーティスト。プロジェクト「Girls Don’t Cry」、「Wasted Youth」のファウンダーであり、オリジナルキャラクター「Vick」、「Visty」のプロデューサー。「Louis Vuitton」、「Nike」、「HUMAN MADE」といったファッションブランドや、「Budweiser」、「G-SHOCK」、「UNIQLO」といった世界的企業とコラボレーションを展開。同時に「ComplexCon」、「Coca-Cola X Fes」、「Patina Osaka」など、イベントやホテルのクリエイティブディレクションも行う。自ら立ち上げたストリートカルチャーマガジン「THIRTY 3 MAGAZINE」の編集長を務める傍ら、2026年には韓国のLOTTE Museumにて個展「VERDY: I Believe in Me」を開催するなど、デザイナーという枠組みに収まらず多岐にわたって活躍。自らが代表を務めるクリエイティブカンパニー、VK DESIGN WORKSに所属。