OTHER / 2023.01.13

Welpa

「からだの変化とじょうずに付き合うためには?」スペシャルレポート(1/3)

「からだの変化とじょうずに付き合うためには?」スペシャルレポート

11月21日、心斎橋PARCO 4F「SkiiMaラウンジ」で、スペシャルトークイベント「からだの変化とじょうずに付き合うためには?」が開催されました。

 

イベントにはゲストに、一児の母であり、モデルやソロアーティストとしても活躍する伊藤千晃さん(タレント/歌手)が登場。

モデレーターにはフェムテックを中心にウェルネス事業を展開するfermata株式会社の中村寛子さん(fermata株式会社 CCO)が。

さらにアドバイザーに、「レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ」の吉田昌弘院長も登壇し、医療の専門家として女性の身体の仕組みについてわかりやすく解説。

集まった観客らとともに、女性の悩みや気になる疑問、最新のフェムテックアイテムなどについてトークセッションを行いました。

  • Text
    Naoko Kuroda
  • Photo
    Kazuki Watanabe

中村寛子(以下、中村):女性の体は生涯を通して、どのような変化が起こっているのかについて、改めて学んでいきたいと思います。産婦人科医である吉田先生からご説明をお願いします。

 

吉田昌弘(以下、吉田):女性らしさを作るホルモンに「エストロゲン」というものがあります。このホルモンは体の成長や年齢の変化に合わせてダイナミックな変化をしていくのですが、人間の体内に数多くあるホルモンのなかでも、これだけ大きな変化をするホルモンは非常に珍しいんです。18歳~45歳の性成熟期といわれるところをピークにし、徐々にその数は減っていきます。このホルモンは女性の肌をツヤツヤにする、非常に大事なホルモンでもある反面、悪さをすることもあるんです。「エストロゲン」は卵巣の一部から出るもので、女性として生まれたその瞬間から体内にあるホルモンです。それが思春期を迎える頃から徐々に分泌され、毎月排卵を促すなどのメカニズムが働く。実は卵巣は、親指ほどの小さな内臓だとご存知でしたか?

 

伊藤千晃(以下、伊藤):え?そんなに小さいものなんですか?

 

吉田:そうなんです。それが体に劇的な変化をもたらす役割を持っていて、卵巣からはほかにも「プロゲステロン」など、色々なホルモンが分泌されているんです。

 

伊藤:グラフを見ると、まるでジェットコースターみたいに大きなカーブでホルモンの数値が変化していて。それが自分の体のなかで起きていると思うと、改めて女性の体って年齢によって変化が大きいんだなと感じますね。

中村:今回は、女性のライフステージごとに多い悩みや気をつけるべき症状や対処法などについて、3つのパートにわけてお話しをしていきたいと思います。まずは思春期や成熟期に多い「生理」について。伊藤さんも生理を経験していますが、何か悩みなどはありますか?

 

伊藤:生理前はPMS(月経前症候群)や情緒不安定になったりイライラしたり。生理になると初日と2日目はお腹が重くて、時には痛みで立ち止まっちゃうくらいのときもあるんです。出血が多いときには血の塊が出たりすることもあって、それが良いことか悪いことなのかもわからなくて。痛みもないし、そのまま放置していいものか悩みますね。みんなにもそういう悩みがあるのかなって。生理の悩みって、周りにも聞きにくいですよね。

 

中村:生理中の悩みに対してはどのような対処法を取られていますか?

 

伊藤:甘いものとか脂っこいものを食べたくなるんですけど、出来る限り摂取しないように心がけています。身体を冷やさないために氷入りの飲み物は飲まないとか。人前に出る仕事をしていることもあって、無茶をした分は自分の身体に返ってきてしまうので、出来る限りのことはやろうと前向きな姿勢で取り組んでいますね。

 

中村:さすがプロフェッショナル! 私は生理中にポテトチップスとチョコレートを無限に食べてしまう癖があって…。

 

伊藤:わかります! 気付くとポテトチップスをひと袋食べてしまったりとか(笑)。我慢しすぎることがストレスにもなるので、無理はしないようにしていますね。

 

中村:生理中に血の塊のようなものが出ることについては、何か身体のなかで問題が起きているんでしょうか?

 

吉田:よく診察でも受ける質問ですね。生理中の血の塊については経血量の多さなど、若年であることが影響している場合もあり、年齢を経ると経血量は減っていきますから、大きな心配は基本的にはありません。それでも、なかには子宮筋腫などが隠れていることもありますから、気になる時は気軽に診察を受けるようにしてほしいですね。

中村:お客さんの中には「生理痛がひどくて困っています。病院でピルの服用を勧められましたが、お薬には頼りたくない気持ちもあり悩んでいます」という質問が届きました。

 

伊藤:すごくわかります! 自分の身体のなかに入れるものなので、最初はすごく怖いですよね。初めての服用だと、自分の身体にどう変化が起きるのか。良いことよりも悪いことのほうが頭に浮かんじゃいますよね。

 

中村:低用量ピルは生理痛を緩和してくれるものといっても、日本では副作用が気になったり、「ピルはあまり良いものではない」というイメージが先行しがち。私も学生の時は倒れてしまうほど生理痛が酷かったんですが、低用量ピルを服用してから生活が180度変わったように感じました。

 

伊藤:私は出産してからピルを服用したことがあります。当初は「飲みすぎると効きにくくなるんじゃないか」と不安もありましたけど、実際に服用してみると悪いことは一切なくて、PMSも少し安定して。でも、私は処方を受け取ったり、決まった時間に服用することなどが負担になってしまって服用を止めてしまったんですね。

 

吉田:当院での診察では生理痛に関する悩みもよく聞かれます。生理痛への対処としてはピル剤のほか、漢方や運動療法などの生活習慣の改善などもありますが、すぐに効くというものはなかなかないのが現状です。ピルは月経困難症を如実に改善することが可能です。でも、ピルには良い点と悪い点があるので、患者さんに処方するときにはきちんと説明して、把握していただくようにしています。利点としては、学生さんだと大事な試合や受験前に。ほかにも、舞台やお芝居、旅行など大事な場面ではピルの服用は効果を発揮します。副作用を気にされる場合には超低用量ピルというものもありますが、飲み忘れがあると不正出血などを引き起こしてしまう場合もあるので、メリットデメリットを考えないといけないですね。

 

中村:それぞれのライフスタイルに合わせて、きちんと医師と相談することが大事なんですね。ほかにも「生理中は気分が下がってイライラしてしまいます。どうすれば軽減できますか?」という質問がありました。伊藤さんはダンスパフォーマンスなど、カメラの前でお仕事することも多いですが、そんなときはどう対処されているんですか?

 

伊藤:出来る限りの努力はしますが、感情を完璧にコントロールすることは無理に近いと思っています。なので、自分を責めないようにしていますね。20代の頃は情緒不安定やイライラした気持ちは自分の弱さや責任のなさが原因だと思い込んで、自分を責めていました。でもそれって、回りまわって自分を傷付けていることになる。自分自身を想ってあげるのが、大事なポイントかなと思っています。

 

中村:グループとして活動されていたときは男性メンバーもいたので大変なことも多かったんじゃないですか?

 

伊藤:結成当初は女性の身体についての悩みは言い辛いし、イライラして棘のある言い方をしてしまったなって、後悔したこともありました。活動に慣れてきたときでも、男性メンバーが気を使ってくれたひと言に傷ついたりすることもあって。心のバランスを取るのが難しい時期もありましたね。

 

中村:そんなとき、気持ちをリラックスするために愛用していたアイテムはありましたか?

 

伊藤:自分の感情をコントロールするためにも、楽屋に好きな香りにしてみたり、男性メンバーに情報を聞いたりして助けてもらったことがありましたね。

 

中村:隠さずにシェアすることも大事なことですよね。生理中の気分を和らげるための、オススメのフェムテックアイテムをご紹介しますね。生理中は匂いや蒸れが気になる方もいらっしゃるかと思います。そんなときは「明日はわたしは柿の木にのぼる」というミストアイテムがオススメです。気になるデリケートゾーンに直接噴きつけたり、生理用品を交換するときにトイレットペーパーにつけてふくだけでもさっぱりします。こういったアイテムを使うことで、自分らしくいられる、気持ちをコントロールすることもできるかと思います。

 

伊藤:私はこういうアイテムをライブパフォーマンスをしていた20代のときに知りたかったですね。ライブ中って汗で蒸れるし、生理中にはかぶれることもあったんですよね。当時は私自身に知識がなかったこともあって、選択肢がなかなか見つからなくって。いまはそういったフェムテックアイテムを選べる時代になってきているので、ぜひみなさんにも活用してほしいですね。

中村:ほかにも、フェムテックアイテムとしては吸水ショーツや月経カップというものがあります。月経カップは第三の生理用品といわれているもので、最近では温泉やプール、お風呂にも入れるようになっています。お子さんとお風呂に入るときなどにも使えるので、多くの方に活用していただきたいアイテムですね。「Welpa」にもたくさんのブランドを取り扱っていて、吸水ショーツは実際に試着もしていただけます。伊藤さんは吸水ショーツや月経カップを使われたことはありますか?

 

伊藤:私は吸水ショーツを好んで使っています。これまでに漏れたこともないし、匂いや蒸れなども気にならなくなって、ナプキンを使うこともなくなりました。ショーツにはいろんな形があるので、気になる人はぜひ色々と試していただきたいですね。でも、月経カップはまだ使ったことがなくて。アイテムを実際に見たり、いろんなブランドがあることも知っているんですが、自分にどれが合うのかがわからなくって。みんなどうやって選んでいるんですか?

 

中村:「fermata store in Welpa」でも、よくお客様から聞かれる質問ですね。

 

伊藤:自分が不快にならないものを選ぶのがいいのかもしれないですね。

 

中村:月経カップはブランドによっても硬さが異なるので、お店で手にとっていただくのがオススメです。慣れてくれば快適に使えるアイテムですが、これはあくまで選択肢のひとつ。無理して使うのではなく、心地良いな、使ってみたいなと思ったときに選んでいただけるといいですね。

 

 

中村:生理に関する悩みは多くの女性が抱えています。産婦人科医の視点から、思春期から成熟期に注意すべき病気や症状などはありますでしょうか。

 

吉田:ピルなどを使用していても、性感染症などは予防できるものではありません。最近では若い女性を中心に、梅毒反応が増えている報告もあります。当院ではピルなどを処方する際に、避妊具なしでの性交渉によって疾患が出る場合があることもきちんと説明しています。ピルは妊娠を予防するものであっても、性感染症を予防できるものではない。もっと正しい知識を広めないといけないなと感じますね。特に梅毒は治癒しても、妊娠出産時など生涯にわたって陽性反応が出てきてしまうんです。

 

伊藤:完治はしないということですか?

 

吉田:完治はしますが、陽性反応が残ってしまう。梅毒は母子感染のリスクがあるため、妊娠を考えている方には注意していただきたい病気なんです。ほかにも、ヘルペス感染症などは一度感染するとウイルスが神経節という神経の集まる場所に潜んでしまうので、免疫が落ちた場合などに再発することも多い。出産時にヘルペス感染症が起きてしまうと、胎児に非常に大きな問題をもたらしてしまうこともあります。そういった疾患にかかることは仕方がないのかもしれませんが、自己管理は大切にしてほしいですね。

 

中村:最近は子宮頸がんも大きな問題になっていますよね。

 

吉田:子宮頸がんについては、年々若年化が進んでいます。「HPV」、ヒトパピローマウイルスといわれているものは、主に性的接触や性感染症で感染すると考えられています。早期発見早期治療が大事な病気なので、定期的な検診などを受けていただきたいですね。