ART&CULTURE / 2023.06.02
長場雄『A PIECE OF PAPER』発売記念ポップアップイベント 長場雄インタビュー(2/2)
シンプルだからこそ見えてくる味わいがありますよね。モノクロの線画作品で知られるアーティスト長場雄さん。先日、作品集『A PIECE OF PAPER』の出版を記念したポップアップイベントを心斎橋PARCO4FのSkiiMa galleryで開催いたしました。この作品集は2018年から2022年までのさまざまなクライアントワークを収録した作品集ですが、なんと計656ページのビッグボリューム。装丁がコピー用紙の包装紙という仕様も注目せずにはいられません。でも長場さん、なぜコピー用紙なんです?
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Interview & TextYusuke Nakamura
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PhotoKazuki Watanabe
ー長場さんの作品は要素が少なく、だからこそ絵の奥行きを想像できることが魅力でもあります。ご自身ではどう考えていらっしゃいます?
長場:見る人が介入できる余白を残して、絵を見て気持ちが入っていくような余裕をつくる。対話できるような絵にしていきたい気持ちはありますね。
ー今回、会場には高さ2mを超える大きな作品も展示されています。描かれているのは、子どもだったり、トリケラトプスだったり、老夫婦だったり。
長場:自分の家族や観た映画のワンシーンです。日常の断片をパズルみたいに組み合わせることで、違った日常の景色や空気感が出てくるのではないかという思いつきから描いた作品です。いろんな情報を選びとりながら、自分なりに解釈していくような。
ー日常の1コマを絵にして、並べて追体験してみるような?
長場:自分が何を感じてどこに進んでいるのか、知りたい気持ちがあります。日常でこれを描きたい、という気持ちは“点”であるんです。それを“線”にしてみたときにどう見えてくるのか?それを探っているのかもしれません。
ー大きな作品だと特に、線にゆらぎがあるところがはっきりと見えます。そこは長場さんらしいのでは?
長場:よく見るとA4の絵でも、ゆらぎがある。それがないと見る人にひっかかりがないと思っています。そのゆらぎがノイズなのか? 味わいなのか? 分からないけれど、そこは残したいですね。パソコンに取り込んできれいな線にしてみても、どこかしっくりこない。精度は高くなるけど、訴えかけるものがない。だから、線のブレ、ゆらぎは大切にしています。
ーあらためて、ご自身で作品集『A PIECE OF PAPER』を見て、どう思われましたか? 自分の足跡を辿るような?
長場:いっぱい描いたな(笑)と。とにかく手を動かしていたい気持ちがあるんですね。手を動かさないと答えが出てこない。それをずっとやっていきたいと思っています。
ーでは最後に、ご自身で長場雄はどんなアーティストだと考えます?
長場:うーん、なんだろ。思い切りが良い?ように思いますね(笑)
(『A PEACE OF PAPER』を)振り返ると無理せずにできたものだし、クライアントも含め、いろんな人に自分の作風を分かってもらえていることはありがたいことだと思います。
【ONLINE PARCO】
2023年6月2日(金)10時より「ONLINE PARCO」にて展覧会『A PIECE OF PAPER』のオリジナルグッズ商品が販売開始。
【書籍概要】
長場雄作品集『A PIECE OF PAPER』をPARCO出版より刊行。
2018年~ 2022年までに携わった300案件以上のクライアントワークの原画を掲載するとともに、
雑誌、アパレル、広告物、WEBサイトなど、多様な形で展開された完成写真も併せて掲載。
また、長場氏が作品制作にコピー用紙を使用していることから、「コピー用紙」とその「包装紙」を模した特別な装幀と製本で、1枚の紙とペンから作品が生みだされ積み重なっていく様子を656ページというボリュームで表現。長場氏の5年の仕事を一望できる一冊となります。
【書籍情報】
『A PIECE OF PAPER』
■著者:長場雄
■仕様:A4 / 並製 / 656ページ
■予価:3,960円(税込)
■販売元:PARCO 出版
■ISBN:978-4-86506-407-0
長場雄
アーティスト。1976年東京生まれ。白黒のラインのみで構成された作品で知られる。作品発表の他、広告、書籍、国内外の名だたるブランドとのコラボレーションも行い、国内のみならず海外においても人気を博している。