ART&CULTURE / 2023.12.04
中村佑介 |『中村佑介 SPLIT!』展 INTERVIEW (2/3)
現在、心斎橋PARCOの5F特設会場でイラストレーター中村佑介の『中村佑介 SPLIT!』展が開催中。今回の展示では、2024年度のオリジナルカレンダーを始め、過去の代表作の着色前の原画も。その緻密な描き込みと構成力、じっと見入ってしまう中村ワールド。昨年、画業20周年を迎えた中村さんに今回の個展について、そして一貫した画風のモチベーションについてお聞きします。
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Interview & TextYusuke Nakamura
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PhotoKazuki Watanabe
ー今回の展示も含めて、画業21年を振り返ると、ご自身をどんなイラストレーターだと考えます?
中村:ずっと頑張っている、という感じですね。最初のアジカンのジャケットから丁寧に描いていると思いますね。今、見ると、確かに絵の見せ方、伝え方はまだ稚拙なものもありますが。(過去の作品を)懐かしいとはあまり思わないですね。もうちょっとこうすれば良かったのにな、と思うこと次にすれば良いので、その都度満足はしています。ずっと気付かれない自分だけのこだわりも見えるし。自分は自分を褒めてあげたいですね。
ー横顔の少女のシリーズは、まるで万華鏡を覗くような情報量。構成と緻密さが一貫していますね。
中村:ですね。今回の会場には、自分の過去のいろんな仕事が並んでいるわけです。例えばギャラで言うと、5,000円から50万円とかまで、いろいろとあるわけで。ギャラに関わらず、どれも一貫している。ずっと頑張ってきたんだな、と。
ーずっと頑張れる、続けられている理由とは?
中村:怨念ですよ(笑)。小学校の時はクラスメイトに“中村くん、絵を描いて~”って持ち上げられたのに、中高生になると「一人で絵を描いててキモい」扱いですよ!野球部は地区予選に行っただけで朝礼で表彰されてたんですが、僕は県のポスターコンクールで一等賞になったのに、何も触れられなかったり。その怨念(笑)。怨念が死ぬまで絵を描くエンジンになりますよ。
ー今も原動力は“怨念”?
中村:今はむしろそれがあって良かったなと思ってますね。それと、絵を描く人は社会性がない感じがして。社会性がないから絵に打ち込めたとも言えるんですが、僕はそこにずっとコンプレックスを感じていたんですよね。休み時間に、みんながドッジボールしてる時もひとりで絵を描いていたし。美大でも、合コンにもバーベキューにも誘われないし。就職の時も何をやっていいのか?分からなかったし。
ーそんな中、絵を描くことは社会とつながる手段でもあった、と。
中村:そうです。絵の仕事があって、社会と結びついていることが、生きてていいんだよね?という確認でもあって。ニーズがある、ということは社会にきちんとハマっている、ということで嬉しいんですね。だから、こんなに人がたくさんいる心斎橋のPARCOさんで展示させてもらえるのは、そういう意味でも嬉しい。
ーこれだけのお仕事を積み重ねてきて、いまだにそんなこと考えるんですね?
中村:社会とつながることもそうですし、自分が小さい頃に見ていたイラストレーターで、今も同じように活躍されてる方って一握りなんです。イラストの世界は描く側も観る側も20代~30代が花盛りで、寿命の短い文化だと感じます。そういうことを考えると、自分は割と早くから注目されたことに、「これはきっと5年でダサいって飽きられるコースや!」と思っていたんですね。だからそうならないように、いろいろ考えてきました。その中でも、一生懸命に描くというのは基本だけど絶対に大切で。