ART&CULTURE / 2022.11.22

『SEIJI MATSUMOTO EXHIBITION “Fun!”』松本セイジ インタビュー(2/3)

『SEIJI MATSUMOTO EXHIBITION “Fun!”』松本セイジ インタビュー

ハッピーなのか? とぼけているのか? ビックリしているのか? ちょっと不思議な表情を持つ「ねずみのANDY」シリーズで知られるアーティスト、松本セイジ。現在、心斎橋PARCO館内のSPACE14とSkiiMa Galleryの2つのスペースで、どーんと開催中の『Fun!』展ではシンプルでポップな絵画作品のみならず、約1mのフィギュアに初の映像作品も、と“全部盛り”。松本さんいわく「現時点での集大成」なのだそうです。

  • Interview & Text
    Yusuke Nakamura
  • Photo
    Yuji Iwai

―「ねずみのANDY」を発表される以前は、どんなモチーフの作品を描かれていましたか?


松本:昔、大阪芸術大学の頃から動物をモチーフにすることは多かったですね。


―松本さんの制作における肝となっていることは?


松本:昔から変わらないのはその場で自分が感じたことからの発想や、自分が居る場所から描く、ということですね。


―昨年、長野に拠点を構えたことから生まれた「DOG&DUCK」シリーズのような?


松本:そうですね。作品の制作は、いかに自分の生活からの刺激や経験をかっこつけずに、背伸びせずに表現できればいいなと考えています。あとすでに日常の中にある幸せを感じて欲しい、というコンセプトがあるので自分自身も楽しく描きたいと思っていますね。

―キャラクターを描く際に注意しているところは? 表情はただ“カワイイ”だけに着地させていないような。


松本:例えば、ANDYは黒目を少しずらしたり、見る人と目が合わないようにしている時があります。目が合えば、安心するんですけど、何を考えているんだろう?っていう風に見せたいと考えていて。喜んでいるのか? 疲れているのか? あえて表情をつけないのはANDYと見る人との駆け引き、じゃないですけど想像してもらえたら、と考えています。


―少し立ち止まってANDYの感情を想像させると。


松本:僕は犬を飼っているんですが、犬の感情を全て理解できないのでこちらが都合の良いように解釈して癒されているんです(笑)。それと同じように自由に感じて欲しいので表情を付けていないんですね。

―モチーフ以外のスペースの取り方も松本さんがこだわっているところなのでは?


松本:余白を残すことは意識していて。それは、その余白から自分なりのストーリーを想像してもらうために、ですね。僕がストーリーを押し付けるのではなくて。想像の余地があるものが好きだし、作品内に情報量が多いと迷うというか。だからシンプルで分かりやすいけれど想像できる深さもある、それが理想ですね。


―余白をどう扱うか? それは元デザイナーらしい発想なのかも?


松本:デザイナー時代には、例えばUIUXデザインも担当していたんですが、そこではいかにシンプルに分かりやすく、使いやすく、を考えていたので身に染みているんだろうなとは思います。でも、もともとシンプルなものが好きというのもありますけどね。

―これまで、さまざまな企業のクライアントワークを手掛けられています。それと自らの作品の違いをどう捉えています?


松本:どちらも自分の作品として制作している感じで。グッズもそうです。アートは自分の人生を元に描く、クライアントワークはそのクライアントが伝えたいことを元に描く。そのプロセスはあまり変わらないんですね。


―では作品の完成はどこにあると考えますか?


松本:描き終えると一旦満足できる部分もありますが、作品を見てもらって、なにかを感じてもらって、そこでやっと完成だと思っています。

ねずみのANDYの立体作品も